下町ロケット |
池井戸潤
小学館
本書は、私が紹介するまでもなく、いま最も売れている書籍(今年の直木賞受賞作です)かと思いますが、小説ながらビジネスや人生を大いに考えさせられる優れた一冊ですし、一度読み始めたら止まらない面白さ、何度も目頭が熱くなる感動を与えてくれる傑作ですので、ご紹介させていただきます。
主人公は、スタッフ数200人ほどの町工場の社長。大口クライアントやメインバンクから見放され、おまけに特許違反で訴えられるという問題が続き、会社の存続の危機に直面します。そこには中小企業を見下す大企業の冷酷で悪意に満ちた戦略があるのですが、自社のスタンスを貫き、真摯にビジネスを続ける主人公を周囲が応援することによって、V字回復していくというストーリーです。
たとえば、こんなセリフがあります。会社存続を危機にひんしているときに、巨大企業から巨額の料金で特許使用をしたいという依頼があり、それを拒否する場面です。
「知的ビジネスで儲けるのは確かに簡単だけれども、本来それはウチの仕事じゃない。ウチの特許はあくまで自分たちの製品に生かすために開発してきたはずだろう。いったん楽なほうへ行っちまったら、ばかばかしくてモノづくりなんかやってられなくなっちまう(中略)。 仕事というのはとどのつまり、カネじゃない」
また、こんな素敵なセリフもあります。ロケットを自社製品で飛ばしたいというロマンを追いかける社長に対立して会社を辞めようとする社員に対することばです。
「俺はな、仕事っていうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃあ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない」
私も含めて、多くの人が「ロマンとソロバンの両立」を求め、悩んでいると思います。
そんな人たちに、勇気と仕事の意義を再確認させてくれる、秀逸な小説です。
勧善懲悪的な単純さはあるものの、読み終わった瞬間、池井戸潤さんの作品をもっともっと読みたいと思いました。
----------------------------------------------------------------
<オススメ度> ★★★★
(評価の見方)
★★★★★・・・一年に出遭うか出遭わないかの最高傑作
★★★★ ・・・ぜひ、みなさんにも読んでほしい一冊
★★★ ・・・おススメ!
★★ ・・・まあまあ、おススメ
★ ・・・読んで損はない
宿屋大学ホームページへ