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2012年7月4日水曜日

『「超」入門 

 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』


鈴木博毅 著

定価:¥1,575
単行本: 248ページ
出版社: ダイヤモンド社
発売日: 2012/4/6

<概要と読みどころ>

太平洋戦争で、なぜ日本が負けたのかを分析した『失敗の本質』の解説書なの ですが、本書で挙げられている「戦争で負けた理由」のすべてが、今の日本企業の弱点、日本人組織の弱点、多くの日本企業が世界から劣後してきている原因と、笑っちゃうくらい一致しています。 要するに、日本人は、敗戦から学ばず、本質的にはなにも変わっていない。 敗戦論というよりは、日本人論ですね。

  敗戦の理由を大きく7つに分けています。

①戦略性のなさ  大局的な戦略がなく、戦術にたよる。  目標達成につながらない局地戦の勝利の積み上げばかり  再現性の少ない一つの成功体験を成功のセオリーと勘違いして連発してしまう

②思考法  型の習熟と、その鍛錬ばかりに力を入れて、環境の変化に対応できない

③イノベーションが起きにくい組織  時代や環境が変わっても、成功体験による型を重んじて  同じ行動をとり続ける

④「勝利の本質」ではなく、型の伝承を重んじ過ぎる  型を重んじる組織では、新しいやり方を敵対視してしまう

⑤現場の優秀な人材を軽んじる  現場に権限を与えない

⑥現場を知らないトップが、一方的に現場に指示を出し、  下からの意見を吸い上げない、もしくはフィルタリングされた  誤った情報を鵜呑みにする

⑦場の空気に迎合する


  まあ、とにかくいまの日本の弱点として、思い当たる節のオンパレードです。
その中で、特に腑に落ちた点は「戦略の指標」と「成功体験による型の伝承」 という二つです。
日本は戦略の指標が間違っていたといいます。
ドイツ留学をした石原莞爾という陸軍参謀が「この戦争は持久力のある方が勝つ」と進言したにもかかわらず、日本軍は「どこかの戦場で大勝利すれば勝敗が決まる」という考えを改めなかったそうです。
その結果、日本軍は戦局とはあまり関係ないところでの勝利、つまり無駄な勝利を積み重ねたといいます。 つまり、選択した「指標」を間違えたということです。

本書の中では、「戦略とは追いかける指標のことである」というフレーズが何度も出てきます。 その通りですね。

  もう一つ、「成功体験による型の伝承」ということ。 「守・破・離」といったように、日本の伝統文化、武道などの習熟には 「型」の伝承がありますが、環境やルール、指標が変わったら、意味をなさなくなったりします。

良い例が、原先生が先日の宿屋塾でおっしゃっていた「おもてなし原理主義」 星野社長が15年も前から唱えている「アンチ顧客満足至上主義」です。米国型資本主義の元、ホテルが金融商品化されたいまでも、利益という指標ではなく、顧客満足や職人としてのサービス技術という指標をいまだに追っているホテル業界人がいると思うのですが、指標を間違え、指標を変えよ うとせず、型にこだわり過ぎることで本質が見えないというのは日本人の弱点でしょう。

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<オススメ度> ★★★★★    

(評価の見方)    
★★★★★・・・一年に出遭うか出遭わないかの最高傑作    
★★★★ ・・・ぜひ、みなさんにも読んでほしい一冊    
★★★  ・・・おススメ!    
★★   ・・・まあまあ、おススメ    
★    ・・・読んで損はない

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