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2011年7月4日月曜日

書評 『脱「コモディティ化」の競争戦略』



脱「コモディティ化」の競争戦略
リチャ-ド・A.ダベニ-/東方雅美
中央経済社
1,890円(税込)


 宿泊特化型ホテルの差別化を考えていたときに出合った本です。
 基本的な機能さえあれば、消費者は安いほうを選ぶ。このような商品のことを「コモディティ商品」というそうです。例えば、ビニール傘、例えば、メモに使うノートなど。つまりは、100円ショップで売られているようなモノはすべてコモディティ商品になりうるものなのかもしれません。
 そして、宿泊特化型ホテルも、実は「コモディティ商品」なのだということが分かったのです。安全、安心、清潔、安眠が約束されていて、立地が良ければ、安いホテルをお客様は選ぶ。顧客満足を提供しただけでは、価格コンシャスなホテルに勝てないということです。

 著者は、この「コモディティ商品」を10年以上、30業種以上にわたって研究してきた米国の教授です。
 コモディティ化するのには、①安物化、②乱立、③加熱という3つのパターンがある。コモディティ化にはまってしまった企業は、この3パターンのどれにはまっているのかを探り、その罠から、①罠から逃れる、②罠を破壊する、③罠を利用するかして、コモディティ化を回避する。その方法論が書かれています。

 ホテル業界は、「乱立の罠」に入っており、マリオット、IHG、スターウッド、ヒルトンなどのホテル企業が、どのように罠から脱しようとしているのかも、詳しく紹介されています。

 さて、日本の宿泊特化型ホテルはどうか?
 おそらく「乱立の罠」にはまっている状態でしょう。
 例えば、築数十年のビジネスホテルが、振興チェーンに包囲されてしまった場合、どう対処したらいいのか。本書の122ページにこうあります。

「『価格とベネフィット』のマップ上にホワイトスペース(空白の場所)を見つける、あるいは、飽和した古い市場に代わる新たな成長分野を見つけ、脅威となる相手に対処する」

 ホワイトスペースは、現在の基本ベネフィットを理解し、明確にすることによって見つけられる。基本ベネフィットは、いくつかの要素の組み合わせである場合が多いから、要素の組み合わせを変えたり、要素の中身を変えたりするといい。

 もうひとつ、興味深いことが書かれています。
 スターウッドの元CEOであるスティーブ・ヘイヤー氏の言葉です。

「人口統計でのセグメンテーションでは、お客様が何を価値ある経験と認めているかが分かりません。当社では、お客様の感情をもとにセグメンテーションをしています。つまり、お客様がそれぞれどのように感じたいと思っているかです」

 スターウッドが、Wホテルを開発した時の考え方だそうです。Wはライフスタイルホテルとして、「宿泊するホテルの選択によって自己表現したい顧客をターゲットにした」そうです。

 この辺にヒントがあるのではないでしょうか?
 価格競争から脱したいホテルの方は、必読の書です。
 
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<オススメ度> ★★★★★ ← 文句なく!
 
 (評価の見方)
   ★★★★★・・・一年に出遭うか出遭わないかの最高傑作
   ★★★★ ・・・ぜひ、みなさんにも読んでほしい一冊
   ★★★  ・・・おススメ!
   ★★   ・・・まあまあ、おススメ
   ★    ・・・読んで損はない

『脱「コモディティ化」の競争戦略』

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